ヴィンセント劇場<第五幕>第四幕の続き?です。基本的に設定は、FF7から無断借用です。 ペンギン的妄想入り捲りですので、そこ等辺ご承知おき下さいませ。(笑) <第五幕> 『心強い再会』 ミッドガルの再開発は順調に進んでいるが、地方の経済基盤は大きなダメージを受けたままであった。特に食料の問題は深刻で、中央からの支援を受けなければならない状況が今も続いている。 WROの管轄業務も拡大され、治安のみならずあらゆる問題に対処するようになっていた。 局長であるリーブは、デスクワークを潔しとはせず、常に現場に立ち会うのが常である。 ディープグラウンドソルジャーの残党が、地方で山賊行為を働いている事は、何度も報告されていた。その為、物資の輸送を民間業者に委託するには危険過ぎるとの判断で、WROが直接輸送に当たる事になった。 この日、リーブは南部の小さな村落へ送り出す、食料品や医薬品の輸送トラック隊に同行していたのである。 「トラックを盾に体勢を整えるんだ!」飛び交う銃弾を避ける様に、リーブは輸送トラックの傍らで叫ぶ。 何人かの隊員が、リーブの足元に転げる様に走り寄る。 「駄目です、先頭の車両がタイヤをやられ、先に進めません」若い隊員は青ざめた顔で喘ぐ様に報告すると、岩肌にもたれる様にへたり込む。 「動きが取れません、場所が悪かったですな」年配の隊員は、時折トラックの影から反撃を試みるが、如何せんハンドガンでは相手に届きそうも無い。 「残党が居るとは聞いていたが、まさかこれほどの隊列を襲うとは、迂闊だった」如何にも悔しそうに言うが、そこはリーブの事、当事者とは思えない響きがある。 「人員の損害は?」リーブは間欠的に降り注ぐ銃弾に身を竦めながら、年配の隊員に問う。 「幸いプロテクターのお陰で、4、5人が腕と足に負傷、今の所その程度で済んでます」 年配の隊員は諦めずに反撃を続けるが、やはり届く気配が無い。一発の反撃に、数発のお返しが帰って来る。 山間を切り開いて作られ、舗装もされておらず、両側には切り立った岩壁が続き、さらに左右に曲がりくねった道だった。 岩壁の淵から狙われれば、避けるのが難しい事は明白である。 「フロントガラスが防弾で無いのが痛いですな」弾倉を詰め替えながら、年配の隊員が言う。 「賊は何人位かね?」リーブも自分の銃を取り出して言う。 「ああ、安全装置は左側です。レバーを下げて。十人、いやもう少し多いですかな。下手な襲撃で助かりましたよ、正面からしか撃って来ません。」取扱にもたついている様子に、アドバイスしながら年配の隊員は言う。 「有難い状況ではありませんね。救援が来る迄持ち堪えればいいのですが」慣れない銃を手に、リーブは溜息まじりに言う。 「遠足にしては賑やかだな」聞き慣れた声に、リーブは顔を振り仰いで岩肌の上を見上げると、真っ赤なマントをひるがえした、長身の姿が目に映る。 「君か?そんな所では撃たれるよ」リーブが言う側から、一発の銃弾が唸りをあげてマントの男に襲いかかる。銃弾は男の左手であっさり弾かれた。 「危ないですよ、降りて来たらどうですか?」リーブは男に声をかけるが、男はそれには答えず、不意に姿が掻き消える。 跳躍した男は、空中で身を回転させながら銃を抜くと、素早く連射する。一旦リーブの隠れるトラックの上に降り立った男は、再び跳躍すると輸送隊の前方に姿が見え無くなった。 「誰ですか?あの人は?」若い隊員が目を丸くして言う。 「なんだ知らんのか?あれがヴィンセント・バレンタイン、最強のガンマンさね」年配の隊員は、若い隊員がヴィンセントの事を知らない事にあきれた様に言う。 その間にも、遠くから鋭い連射音が響いて来る。と、輸送隊への銃撃が止まった。 「どうやら、最強の救援が来てくれたみたいですね」リーブは銃の安全装置を掛け直して、しまいながら言うと、顔をほころばせた。 「ほれ、しっかりせんか」年配の隊員は若い隊員を立たせながら言う。 「損害を確認して、出発出来る様に準備して下さい」リーブは埃りを払いながらトラックの影から出ると、銃撃が止まった事に戸惑っている隊員達に指示を出す。 しばらくすると、赤いマントをひるがえして、ヴィンセントが輸送隊の中央に飛び降りて来た。 「ほぼ片付けたが、何人か逃げたようだ」輸送隊を眺め回しながら、ヴィンセントは言う。 「助かりましたよ。と言うか、また助けて頂きましたね」リーブは懐かしい友に再会したように言う。 ヴィンセントは一度リーブと目を合わせるが、何も言わず目を転じて、負傷した隊員を手当てする様子や、損傷を受けたトラックに群がる隊員達を見回した。 ヴィンセントの反応は予想出来るものであるが、リーブには何かが変わったと思わずにはいられなかった。肩をすくめると、隊員が集まっているトラックに歩み寄る。 「パンクですか?交換できますか?」リーブはしゃがみ込んでいる隊員に声をかけた。 「予備は有りますが、この車両にジャッキが積んで無いんですよ。他の車の交換が終る迄、作業は中断ですね」手の埃を払いながら隊員は立ち上がった。 「どれ、どいてみろ」後ろから声がして、居合わせた者が振り返ると、ヴィンセントが左腕の袖を捲りながら立っていた。 人垣をかきわけて、ヴィンセントは左手でトラックの淵を掴むと、軽々と持ち上げてみせる。 「君達、直ぐに交換を」ヴィンセントの行いの意味を、素早く汲み取ったリーブが指示する。 タイヤ交換が終った事で、輸送隊は直ぐにでも出発できるようになる。 「重ね重ね感謝です。ヴィンセント」リーブは顔をほころばせて手を差し出すが、ヴィンセントはそれを無視するのだった。 「俺は逃げた奴らを追う」そう言って、マントをひるがえして歩き出す。 「リーブ」ヴィンセントは途中で足を止めて言った。 「なんでしょう?」リーブはヴィンセントに身を向けて、何かを期待するように答える。 「お偉いさんが現場にいると、隊員にはいい迷惑だぞ」ヴィンセントはそう言うと、一気に跳躍して岩肌の向こうに消えたのだった。 「やはり変わりましたね、あなたは・・・」苦笑いをしながらリーブは呟く様に言うと、輸送隊に指示をだす。 「さあ、出発しましょう。首を長くして待っている人達がいますからね」 後日、リーブは執務室で一つの報告を受ける。 南部残党捜索隊からの物で、あの日襲撃を受けた場所から幾らも離れていない場所に、アジトの後らしい物を発見したとの報告だった。そしてその中に、もう一つの一文があった。 『残党とおぼしき死体を11体確認。件の山賊の仲間と思われる。アジトの規模から、この地域の残党は排除されたものと認む』 リーブは椅子に背をもたせると、つと視線を天井に向ける。 視線の先、ミッドガルは今日も快晴だった。 <第五幕終劇> ジャンル別一覧
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